経済安全保障コンサルティングの舞台裏
近年、経済安全保障は日本企業にとって避けて通れない経営課題となっています。特に米中対立の激化や台湾有事のリスクが叫ばれる中、企業はどのようにリスクを管理し、事業を継続すべきかを真剣に考える必要があります。本記事では、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)の國分俊史氏が語った経済安保コンサルティングの実情を基に、その全体像を解説します。
経済安全保障コンサルティングとは何か?
経済安全保障を巡る議論では、政府への「政策提言」と企業への「コンサルティング」は明確に異なります。政策提言は、国の輸入規制の在り方などマクロな視点での議論が中心です。一方、コンサルティングは、企業が具体的にどのようなリスクを抱え、どう対応すべきかを助言します。
例えば、中國製の人型ロボットを使用して日本企業が生産した製品が米国の輸入規制対象になるかどうかを事前に評価し、生産拠点の見直しを提案するのがコンサルティングの役割です。このように、先手を打ったリスク管理が求められています。
リスク管理を高度化するデータベースの活用
EYSCは、米国政府の対米外国投資委員会(CFIUS)が対中国リスク分析に使用するデータベース「WireScreen」の日本での販売権を持っています。このデータベースには、中國企業1000万~2000万社、経済スパイリスク人材2000万人の情報が収録されており、高度な分析が可能です。
一部の先進企業では、このデータベースを導入して米国政府のリスク評価手法を把握し、自社のリスク管理体制を強化しています。さらに、FBIと連携した通報の仕組みを社内に構築するようコンサルティングも行っています。これが現在の経済安保コンサルの現実です。
有事のBCPとショック・ドクトリン戦略
経済安保コンサルティングでは、有事を想定したBCP(事業継続計画)の策定も重要なテーマです。米国シンクタンクが公開した「台湾有事」の図上演習では、横田、厚木、横須賀、岩国、佐世保、嘉手納の在日米軍基地がまず攻撃される想定が示されています。これに対応するため、一部の先進企業は基地から半径10キロ以上離れた場所に倉庫や工場を移設するなどの対策を進めています。
さらに、台湾有事の際に競合他社を出し抜き、企業価値(株価)を上げる戦略を策定する企業も現れています。これを「ショック・ドクトリン戦略」と呼び、有事を前提とした経営判断が求められています。
リマニュファクチャリングが日本経済に与える影響
経済安保の観点から、製品のリマニュファクチャリング(中古部品を再利用して新品同様の性能に再生させる生産モデル)が広がる可能性があります。米アップルがiPhone14を修理しやすい設計にした背景には、中國依存を削減する経済安保の目的があると米シンクタンクは指摘しています。
仮にこの生産モデルが世界の製造現場に普及した場合、日本の部品産業は縮小し、GDPが1.7%(約9兆円余り)減少する可能性があると國分氏は試算しています。以下にその影響を示します。
このように、リマニュファクチャリングの進展は日本経済に大きな影響を及ぼす可能性があります。企業はこの動きを注視し、新たなビジネスモデルへの対応を迫られるでしょう。
経済安保コンサルティングの今後
経済安全保障コンサルティングは、企業が地政学リスクを生き抜くための重要な手段となっています。政策提言とコンサルティングの違いを理解し、データベースの活用や有事のBCP策定など、具体的な対策を進めることが求められます。また、リマニュファクチャリングの普及が日本経済に与える影響も無視できません。企業はこれらの動向を踏まえ、柔軟かつ先見性のある経営判断を行う必要があります。
経済安保コンサルティングの主なサービスは?
主にリスク評価、サプライチェーン管理、有事のBCP策定、データベース導入支援などがあります。
WireScreenとは?
米国政府のCFIUSが対中國リスク分析に使用するデータベースで、中國企業や経済スパイリスク人材の情報を収録しています。
リマニュファクチャリングの日本への影響は?
日本の部品産業が縮小し、GDPが1.7%減少する可能性があります。
※本記事は、EYSCの國分俊史氏の記者説明会での発言を基に構成しています。数値は同氏の試算によるものです。
参考情報: www.kyodo.co.jp